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ホワイトカラー・モデルの理論的含み (まとめ) pdf
2003.5.20
1.はじめに
問 題
大卒ホワイトカラーは、企業内でどのように育成され選抜されていくのか、ホワイトカラーはブルーカラーと本質的な差異があるのか、という問題を考える前に、ホワイトカラーの評価基準や、昇進と報酬のタイミングの決まることや、また技能や潜在的成長力の測定などの特に難しい問題がある。
他方、大卒者と大卒以外の高等教育を受けた者が、職場に入った日から先輩や経験者からの指導と OJT があるのは現実である。それでは、学校教育と OJT による教育訓練との間には、どのような代替的、あるいは補完的な関係があるのか、という問題がある。
さらに現場での仕事内容とその修得の順序に、どのような規則性・法則性があるのかという点も重要になる。
接近方法
ホワイトカラーにまつわる人材・組織・外的環境の多面性・不確実性を考えると、ホワイトカラーモデルを考察するには、異なった 2 つの道がある。
1)ホワイトカラーの技能や潜在的能力の測定や仕事内容をモニターすることが難しいという事実を認め、その事実をむしろ「与えられた前提」として、その難しさ(不確実性)に対処するために、企業組織はどのような選抜と育成の方法や制度を創り出してきたかを考察するというルートである。
2)ホワイトカラーの技能の測定や評価方法の類型化を試みながら、専門性や生産性、そしてホワイトカラーにおける「変化への対応能力」とは何かを考察することである。
ホワイトカラーの仕事の変化や不確実性はいくつかのレベルが存在することに注意しなければならない。
1)個人の技量にまつわる不確実性、
2)組織自体の持つ対応能力の不確実性、
3)組織の外的環境から来る不確実性。
2. Counter-institution
ホワイトカラーの処遇制度には、いくつかの顕著な特性がある。一つは、給与の上がり方が「年功的」である。その理由は人的資本理論は、訓練によって獲得された技能が生産性を上昇させる結果、賃金も上昇すると考える。
しかし、技能の上昇がない(成長がない)場合でも、給与のプロファイルは右上がりになりうるという場合もある。この点に注目した議論としてラジアの理論仮説がある。
2−1.生産性上昇のない単純なケース
ラジアの分析は、そもそも「定年制がなぜ存在するか」を問うたものであった。その論証は 2 段階に分けている。
1.なぜ賃金プロファイルが年齢・勤続年数に関して右上がりになっているのか。
2.なぜ企業は雇用期間を一定年数以上延長したがらないのか。
ラジアは第一対する説明は:右上がりの賃金プロファイルは、生産性を短期的に測定したり仕事ぶりをモニターすることが難しい種類の労働に従事する者の怠業を防ぎ、労働者から最大限の生産性を引き出すための道具( instrument )だというのである。
ラジアは第二対する説明は:ある時点 N を越えると必ず、企業は労働者に生涯の生産性の現在価値より高い賃金の現在価値を支払うことになる。企業による「支払い過ぎ」が起こる直前の時点 N が存在し、これが定年制が制度として確立する最大の原因である。
しかしラジアの説明の中、最大の問題は、定年の年齢 N 歳になる前に、人員整理や倒産・廃業などが起こりうるため、労働者を「解雇しない」と完全に保証できないということである。つまり長期勤続が慣行となっているような大企業や官公庁の給与体系は、こうした長期雇用保障としているがゆえに「右上がり」になる、ということができる。
個人の生産性を正確に常にモニターすることが可能なタイプの職場の仕事に対しては、賃金が生産性の上昇率以上に右上がりになる可能性は少ない。
生産性が一定でも、賃金プロファイルを右上がりにすることによって、生産性の測定自体にまつわる不確実性を回避できるというところがホワイトカラーの賃金制度のポイントであった。
さらに、この右上がりの賃金プロファイルは、労働者が各々の時点での自己の生産性の最大値を発揮するよう動機付けられているという点にも留意すべきだ。
この推論の大前提は「雇用が保証されている」「長期雇用の慣行がある」ということである。
2―1.生産性の上昇がある、より現実的なケース
人間は成長する、という点につきまとう不確実性の問題が2つがある。
1.個人の成長曲線そのものについての判断をどう行うかという問題。即ち、「成長する」というのは何を意味するかということである。
2.おおまかなところで成長曲線の個人差がわかってくるとすれば、どの時点でその差の評価を開示するのかという問題。
第一の具体的内容は、多くの職能 (function) によって成長力をどの程度規定するのか、学校教育がこの成長力にどのような影響力を与えるのかなどの問題である。
第二の具体的内容。早い時点で選抜すれば、選ばれた者のやる気は更に高まるに限られない。選ばれなかった者の「意欲喪失」が選ばれた者の「やる気」を更に高めるという相乗作用もある。特に評価・測定が不正確であったり不公正であったりする場合、選ばれなかった者の「意欲喪失」の効果は一般に大きい。
それに対して、企業組織はホワイトカラーの選抜についての対策は、選抜・昇進をできる限り遅いタイミングで行うという方式である。企業が最適の選抜タイミングを発見するのは大事である。(しかし、同業他社、外国企業等の人事政策も大きな撹乱要因となりうる。
3.個人と組織の関係
個人の利益と全体の利益との齟齬は起こりうる。
ホワイトカラー特有の問題は、同僚( co-worker )のレベルだけでなく、その企業組織自体の「のれん」や「評判」( reputation )という長期的に形成された「資本」が、その生産性を大きく左右するということである。ブルーカラーの場合は、類比的な現象が資本設備との関係において存在する。
ホワイトカラーの場合、個人と全体の利益の不一致が起こるルートが二つある。
1)組織自体の持つ「評判」という資産が、ホワイトカラー個人の成果に大きな影響を与えるということ。
2)逆の方向に働き、負の効果を持つ。
4.組織内のリスク
4−1.責任とリスクの分布
下位のポストにある者は、ルーティンな仕事をコンスタントにこなして行くことを要求される。ポストが上位に行くほど、ルーティンな要素の割合は少なくなり、ノン・ルーティンな部分が増加する。
リスクの大きな上位の仕事―>勤続年数の長い者がつけば失敗の確立を小さくする−>勤続年数の長い者の保険料が低い−>勤続年数の短い者が就く場合より、賃金が高い
4−2.個人のリスクへの態度
難しい仕事、不確実性の高い仕事は、中・長期的な視点から見ると利益が多き仕事という場合が多い。その仕事を回避するということは、企業利益を低下させることを意味する。
アメリカの弁護士の例である。
もともとのアプローチ: LawSchool →先輩の下で associate として OJT で仕事を学ぶ ( 給与は完全な年功制である ) →パートナーへ昇進→ Up-or-Out (事務所に残れるかどうか)
70 年代:アメリカ社会の訴訟件数の増加→法律事務所は他社から有能な弁護士を引きはじめた→これを対抗策としてパートナーの「能力給」・「成果給」にシフトする動きが出始めた。
「成果」が何を意味するかという問題に対して、法廷でのパフォーマンスや、どれだけ成功報酬をもたらすのかなど様々な点数によって「成果」を数量化して、報酬の額に結びつけるような処遇制度を採用し始めた。
しかし、パートナーたちは「有能」と評価されるために、「割りの悪いケース」を避けるようになった。その結果、法律事務所全体のサービスの質が劣化する傾向が顕著になった。つまり、弁護士たちは事務所全体の長期的利益に対する関心を失ってしまった。
80 年代:新しい処遇制度が始まった(年功製の回復、パートナーへの昇進競争を激しくなる)。「能力主義」に対する強い反省が起こった。
5.ホワイトカラーの技能の特質――外的環境の不確実性との関連
技能の内実をどう把握するか。
第一の区別は:判断業務がホワイトカラーの重要な仕事内容となるが、「判断」と呼ぶのは、「変化への対応」を意味する。
第二の区別は:ホワイトカラーの技能として、
A: ルーティン化された定形的仕事
B: ノン・ルーティンの非定形的仕事の二つあるということ。
A は、基本的に機会による処理が可能なものが多い。
B は前例やテキストブックがない場合であるが、更に 2 つの種類を分けている。
B(S): 多種多様で、幅の広い現場での経験( Ground Work )から学ぶとられる技能。
B(G): 総合的判断能力である。技能の内容自体に相当の不確実性を含む。この技能のいくつかの尺度が考えられる。
1 .他の専門領域の理論と実際の要点を「すばやく」理解する力。
2 .当面の問題に関する「事実」を構成する推理力。(データの理解だけではなく、データでは欠落している隙間を埋める力。
3 .不確かな人間行動を予測したり「深読み」する力。
4 .不確実な情報の下で推量した結果が、良識と直感に合うかどうかを「すばやく」判断する力。
B(S) と B(G) のスキルを区別する重要なポイントは不確実性に対処する「スピード」である。
6.位階別にみた counter-institution の特性
6−1.上位と下位の仕事の性格の差
ホワイトカラーの下位の仕事の技能は上位の仕事と比べ比較的測定しやすい。
ホワイトカラーの上位の仕事となると、次のようなポリシーがある。
1)「リターン・マッチ」はあるとしても、原則としてすでに選抜されたものの中から更に選抜するという過程に入るため、力の散らばりが小さくなり、選抜自体が難しくなる。
2)求められる「変化への対応能力」も、テストしうるケースが事例として少なくなってくるため、更に判定が難しくなる。
こうれらの問題に対して、 2 つの対策がある。
1)生産性の絶対水準を測定することを放棄し、相対的な順位付けのみを考慮する。
2 ) 報酬の格差を大きくするというポリシー。 一般にホワイトカラーの報酬( P )の格差は、上位へ進むほど、
(nは位階の高さを示す)
6−2.上位ホワイトカラーの技能の順序付け
上位ホワイトカラーの技能の順序付けは、最も効率的でかつ公正なものとして受け入れられるポイントが2つある。
1)専門を中心として、その隣接分野にかかわる問題に対して、的確な反応と判断力をすばやく示すことができるかどうかということ。
2)隣接分野での力量を観察することによって、「理解のスピード」を知ることができる。
7.なぜいくつかの「職能」を経験させるのか
どれだけ広く仕事を経験するのが最適なのかという問題の判断は、 2 つの基準から行われなければならない。 1 ) 効率性( efficiency ) 2 )公正さ (equity)
7−1.効率性
効率性は、個人の技能の修得の効率性と、組織内の技能の組み合わせの効率性という 2 つ側面がある。各個人が完全に一つの職能の中の一分野に特化するのがよいが、現実に重要のは、職能間あるいは職能ないの隣接した分野についての知識を一定程度習得していると、組織内の人員の代替性が高まる。
7−2.評価の公正さ
多面的なほうかは、最終的に錯誤のリスクを低下させるためである。
総合的であるがゆえに、一職能内でのある分野の専門的能力と、同一ショク脳内の他分野の能力との間には、かなり強いせいの相関が存在しうる。一職内の小分野での評価は、その人物の全体的な評価のための情報としては、余分となりがちである。したがって職能間のパフォーマンスで見るほうが、その人の力量についての情報量が増す。
7−3.効率と公正の同時達成
主職能を中心として、それに関連性が高い副職能を1,2経験すると、修得コストを上回るベネフィットが生まれる。主職能以外の副職能についての経験は、同一人物の上位ポストへの資質の多面的な評価を可能に理、評価自体の確度を増し、公正さを保証するという重要な利点を持つと考えられる。
Last update:
01/26/2004 20:23
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